「醗酵が紡ぐ食シリーズ」第2回目は、「BISTRO YUIGA」さんです。
こちらは住宅街に佇む古民家をリメイクしたフレンチレストラン。扉を開けると、陰影ある空間に心地よいBGMが流れ、友人の家に招かれたようなくつろぎを感じさせてくれます。
東京・三鷹のフレンチで腕を磨いたオーナーシェフの坂田勉さんと、ソムリエの資格を持つマダムの坂田清美さんが営むこのお店。「特別に奇をてらったことはしたくない」と、地元の旬の素材を最大限に生かすことに専念しています。料理の美味しさを引き立てるのが、フランス産を中心にしたワインの数々。味や香りだけでなく、土、環境、風土、作り手の人柄など、清美さんが心ひかれた魅力あるワインと出会え、楽しめるのも醍醐味です。
酒粕やみりんがフランス菓子の名わき役に
YUIGAのさらなる魅力は、清美さんが手がけるスイーツ。ご夫妻で何度も訪れていたフランス・パリで、マカロンの美味しさに感動し、フランスの伝統菓子を作り始めました。独学で試行錯誤を繰り返しイベントなどで販売するたびに、ファンは着実に増えていきました。評判を耳にした福光屋のスタッフも清美さんのお菓子に着目。ついには東京の直営店で販売することになったのです。
「福光屋さんとのご縁ができてから、酒粕やみりんを使ったお菓子にも挑戦していきました。バタークリームに酒粕を隠し味に入れたマカロン、酒粕とみりんを加えたカヌレ、熟成酒を使ったフルーツケーキなど。酒粕の持ち味はなんといっても「コク」ですね。生クリームよりもさらに濃厚なチーズを思わせる発酵由来の風味があり、牛乳に少し加えるとほどよいコクになります。また、みりんを入れると、ラム酒とはまた別のキャラメルのような味わいが加わるんですよ」と清美さん。
これらスイーツは福光屋の金沢店、玉川店、東京ミッドタウン店のイベント時に販売され、人気を博しています。
「一人酒」のイメージを一新、華やかな日本酒の楽しみ方を提案
お菓子づくりを通じて日本酒にも興味を持つようになった清美さん。しかし、これまでの日本酒というと、「ちびりちびりと一人酒」というような渋めの印象だったといいます。それではもったいないと、ワインのように優雅に楽しく料理とともに味わう「ペアリングディナー」を盛んに行うようになっていきました。そんな提案がようやく浸透した矢先にやってきたのが、コロナ禍。せっかく盛り上がった勢いも一気にトーンダウンしてしまい、とても残念だったそうです。
ここ最近、ようやく持ち直しの兆しがあり、これからインバウンドが戻れば、海外のお客様にも日本酒を楽しんでいただけるのでは、と期待感も。キリリと冷やして前菜に、常温なら肉料理にと、料理に寄り添う福光屋の酒をより多くの方に味わっていただきたいとのことでした。
日本酒の楽しみ広がる、NEW「酒のあて」
現在、シェフの勉さんが取り組んでいるのは純米料理酒を使った、日本酒に合うおつまみ。豚肉をペーストにしたリエットで、イベントなどで販売できるよう瓶詰になる予定です。
一方の清美さんは「酒のあて」になるスイーツを開発中。西洋アニスやキャラウエイ、フェンネルなどのスパイスとチーズを組み合わせたスパイスケーキや、バジルとピスタチオを使った砂糖少なめのクッキーなど、爽やかなハーブの香りとほのかな甘みが広がる「大人のスイーツ」です。
日本酒の世界をより楽しく、ワクワクしたものへと導いてくれる、こうした新しいタイプの「酒のお供」が今、次々と登場しています。日本酒と相性の良いおつまみ(料理)を組み合わせることで、お互いの美味しさを引き立て合う、そんな楽しみ方がこれからのメインストリームになる予感がします。
今回のコラボアイテム
福正宗 純米吟醸 酒粕
酒造好適米を100%使用した、香り高い純米吟醸酒粕です。ペースト状になっていますので、お鍋やお味噌汁に加えたり、甘酒を作る際も手軽にご利用いただけます
三年熟成 純米本味醂 福みりん 720mL
地元・石川県産のもち米のみを原料にした蒸米と、契約栽培の酒造好適米「フクノハナ」のみを原料にした米麹に、自家製米焼酎を使用してじっくりと仕込んだ「本みりん」を、さらに3年以上熟成させました。
百々登勢 十年 長期熟成純米酒 720mL
黄金色に熟成した軽やかで芳醇な味わいが口中でバランス良く膨らみます。比較的濃い味つけの料理、肉料理、乳製品、ナッツやドライフルーツ、チョコレートなどの甘いものとも相性が良い。
Shop Info
BISTRO YUIGA
石川県金沢市水溜町4-1
TEL/076-261-6122
営業時間/ランチ水~金曜12:00~13:30 (LO)、ディナー18:00~20:30 (LO)
定休日/月・火曜