日本酒の「辛口」という言葉の意味をご存知ですか?実は難しい「辛口」とはどんな日本酒か、選び方、人気な日本酒は何かわかりやすく紹介します。
コンテンツ
日本酒の辛口と甘口の違いとは?
日本酒初心者の方でも「辛口」「甘口」という言葉をご存知なのではないでしょうか。しかし意味を理解して辛口・甘口という言葉を使っていますか?
甘口は酒にふくまれる糖分が多いため甘口といわれます。しかし辛口は実際に「辛い」わけではありません。言葉ではわかりにくい「辛口」について詳しく説明します。
そもそも辛口とはなんだろう?
甘さを感じにくい日本酒を辛口の日本酒と表現します。一般的に糖分の含有量が多いと甘いと感じやすいため甘口、少ないと甘く感じにくいため辛口といわれます。
英語では辛口を”Dry”(甘くない)、甘口を”Sweet”(甘い)と表現します。英語は辛口本来の意味がわかりやすいですね。
またアルコール自体にカロリーがあるため、同じアルコール度数であれば、辛口は糖分が少ないため甘口に比べてカロリーが低い傾向にあります。
実は判断が難しい甘口・辛口
日本酒の甘い・辛いは水に対する日本酒の比重が関係しています。
日本酒を醸造する過程でお米のデンプンを発酵させアルコールが生成されます。
醸造する際、お米のエキス(お米の旨味や甘み)をたっぷり残すと、日本酒が甘いと感じやすくなります。またエキスが多いため比重が大きくなります。つまり、甘い日本酒は比重が大きい
一方で、クリアで甘みの少ない味わいにするためにはお米のデンプンの発酵をより多く行う必要があります。それに伴いアルコールもさらに発生。アルコールの重さは水より軽いため、水に対する比重が小さくなります。
つまり、甘い日本酒は比重が大きく、辛口(甘みの少ない)の日本酒は比重が小さい、という関係性になっています。
さて、「比重」がわかれば目の前の日本酒の甘辛度合いがわかりそうですね? 実はこの比重を判断する指標があるのです。
「日本酒度」と「酸度」と呼ばれる指標値で、商品によってはラベルや飲食店のメニューにも記載されていることがあります。
甘さを数値化する「日本酒度」
甘口・辛口を判断する指標として日本酒度があります。日本酒度とは、比重を表した数値です。比重が高いほどマイナスに、低いほどプラスの値が大きくなります。また日本酒の比重は、糖分が大きく影響しており、比重が小さいほど糖分が少ないということです。従って、日本酒度のプラスの値が大きいほど、比重は低く糖分は少なく、結果として甘さが少ないということになります。
ただし日本酒の味わいは日本酒度だけでは決まりません。次に紹介する「酸度」の数値によっても、人の舌は甘みの感じ方が変わってしまいます。
甘みの感じ方に影響する「酸度」
日本酒の味わいに関係するもう一つの指標、それは酸度です。「酸」と言う言葉から、酸っぱいというイメージを持たれるかもしれません。しかし日本酒の酸は酸っぱいだけでなく、味を引き締める働きがあります。
カフェやレストランでケーキを注文した際に、甘酸っぱいソースが添えられていた経験はありませんか?
ソースをかけずにケーキを食べると甘い味わいが口に広がりますが、ソースとケーキを一緒に口に含むと味わいが変わりますね。
ケーキは同じ甘さなのに、ソースの酸味が加わることで引き締まった甘みへと印象が変わると思います。
日本酒も、「酸」が同様の役割を行なっています。
日本酒の「酸」は、日本酒のキレ(後味がスッキリ、残らない)を感じやすくなるための重要な要素なのです。
また、酸度は酸味だけでなく旨味の指標でもあります。酸度の数値が高いほど濃醇(しっかりとしたコク)な味わい、数値が低いほど淡麗(口当たりがなめらか、スッキリ)な味わいです。
味わいは「日本酒度」と「酸度」で決まる
日本酒の味わいは日本酒度・酸度で決まります。そのため日本酒度がプラス(+)だから「甘くないお酒」と予想しても、実際に口に含むと予想を裏切られることがあるのです。
日本酒の味わいは大きく4つに分けられます。日本酒度と酸度の組み合わせに応じて、濃醇辛口・淡麗辛口・濃醇甘口・淡麗甘口に分類されています。日本酒度によって辛口・甘口、酸度によって濃醇・淡麗があり、この組み合わせで味わいが分けられています。
下の表を参考に自分の好みの日本酒を探してみてください。
辛口日本酒の選びに関わる2つの要素とは
単に辛口といっても日本酒によって異なる味わいであることはみなさんご存知かと思います。実際、日本酒は産地や造り方によって異なる味わいになります。
要素1:日本酒の造り方
日本酒には特定名称酒と普通酒の2種類あります。特に特定名称酒は原料や醸造の方法により8つに区分された日本酒です。みなさんがよく見かける日本酒の36%はこの特定名称酒です。特定名称酒の種類によって、日本酒の特徴を見分けることができます。
純米酒
原材料が米と米麹だけなので、お米の旨味や味わいがストレートに感じられるお酒
米の旨みを感じやすくコクのある日本酒
特別純米酒
純米酒の特徴に精米歩合やお米の品種等の特徴をプラスしたお酒
吟醸酒
吟醸香と呼ばれるフルーティーな香りとスッキリとした味わいのお酒
吟醸造りという製法で造られた日本酒で色沢(いろつや)が良い
純米吟醸酒
吟醸香と呼ばれるフルーティーな香りと純米らしいお米の旨味を伴ったお酒
プレゼントにおすすめ
純米大吟醸酒
純米吟醸酒よりも更に華やかな吟醸香と純米らしいお米の上品な旨味を伴ったお酒
米の甘さと程よい苦味を持ったコクのある味わい
本醸造酒
軽さとコクのバランスが整ったお酒
香りが立ち、すっきりとした味わい。
特別本醸造酒
本醸造の特徴に精米歩合やお米の品種等の特徴をプラスしたお酒
要素2:産地
日本酒は、地域によって味わいに特徴があります。その要因として、原料米や水の違いがその一因ではありますが、地域の料理の味わいと密接に関係しており、それが地域の特徴となっています。素材や味付けの傾向で、それに合わせる日本酒の傾向も異なるのです。
大別をすると西日本は甘口、東日本は辛口の日本酒が多いです。
辛口の初心者に飲んで欲しい!きき酒師おすすめの日本酒5選!
ネットショップやスーパーで買えるきき酒師おすすめの辛口日本酒を紹介します。
下記で紹介する日本酒の味わいの指標(日本酒度、酸度、アミノ酸度)は、酒造年度2020年の数値です。数値は酒造年度により若干変動する場合があります。
1. 加賀鳶 山廃純米 超辛口
伝統の手作り山廃酒母で丹念に仕込んだ純米酒。絶妙の酸味と深みのあるコクをもつ、鋭くキレる超辛口。ただ辛いだけでなく、味をしっかりと保ちながら酒の肴を生かす、山廃純米だけが到達できる味わいです。
「Kura Master(クラマスター)日本酒コンクール 2020年度 純米酒部門」プラチナ賞を受賞。
酸度(キレ):2.0
アミノ酸度(旨味):1.9
2. 黒帯 特別純米 悠々
吟醸仕込みと純米仕込みとでキレの良い芳醇な旨味を持つ辛口に仕上げ、さらに蔵内でじっくりと熟成させたゆったりと落ち着きのある「悠々(ゆうゆう)」とした味わいです。金沢の料亭を中心に親しまれており、酒の肴、特に魚料理に合う日本酒です。
熱燗、ぬる燗、人肌感、どの温度帯でも旨さが際立つため、燗の王者と呼ばれています。「Kura Master(クラマスター)日本酒コンクール 2019年度 純米酒部門」金賞を受賞。
酸度(キレ):1.6
3. 加賀鳶 極寒純米辛口
酒造りに最も適した厳冬の時期に、低温醗酵でじっくりと仕上げた純米酒。軽快でキレの良い辛口でありながら、米の旨味が広がる「旨い辛口」です。口に含んだときに米の旨味がフワッと膨らみ、飲み込んだあとにスッと消えていく。そんな「もう一杯飲みたい」と思わせるキレの良さが特長です。「加賀鳶」の中でも常に人気が高く、純米酒の定番としてビギナーから酒通に至るまで、幅広く支持されています。
酸度(キレ):1.8
アミノ酸度(旨味):1.6
4. 福正宗 純米辛口 生詰
日本酒では画期的な黒麹仕込みの純米酒。完熟醗酵によるみずみずしい香りとクエン酸の爽やかな酸味、芳醇な旨味とドライな後味が特徴の生詰酒。和食はもちろん、イタリアンやフレンチなど、さまざまな料理と相性が良く、幅広い温度帯で美味しくお召し上がりいただけます。
福光屋の代表銘柄であり、金沢で最も愛されています。
酸度(キレ):1.8
アミノ酸度(旨味):1.8
5. 加賀鳶 山廃純米 本格辛口
伝統の山廃酒母だけで仕込んだ純米酒。手間をかけた分,米の旨味が味わえます。山廃仕込みならではのコクのある味わいとキレ味が特長の本格的な辛口です。酒通をうならせる、飲み応えのある本格派の辛口です。
酸度(キレ):2.1
まとめ
辛口の日本酒を見分ける際には日本酒度と酸度を確認してみるのがおすすめです。同じ辛口でも味わいは異なります。自分の好みの日本酒度と酸度を見つけ、ぜひお気に入りの日本酒を見つけてみてください。